乳幼児教育で大切なこと

人にはそれぞれの発達段階に課題があります。その発達の途上に満たさなければならない課題を無視して、保育や教育の行政がなされる。政治家や役人は不勉強であると言わざるを得ない。為政者は、乳児や幼児、児童、青年の発達上に不可欠である心や頭の栄養と課題を認識しなければならない。

「回避性愛着障害」 オキシトシン(脳内ホルモン)
0歳から2歳半ぐらいの乳児の課題は「愛着の健全な形成」だ。人は母親との関係を通して、生涯の人間関係のベースを形成する。愛されて育った乳児は生涯人を愛し、また、愛される存在になるといわれています。母子関係は社会性の第一歩でもあります。母の愛が希薄な場合、「不安定な愛着」が形成されます。最近は「回避性愛着障害」の人が急増しています。この障害の人は、生涯人に共感することが困難になります。場合によっては、冷酷な犯罪者にもなり得ます。無償の愛を注ぐ人が「母親でなくては絶対駄目」と言う訳ではありませんが、忙しい保育園の保育士では難しいでしょう。主として、オキシトシンと言う脳内ホルモンが関与しています。乳児のときに愛されると、生涯オキシトシンが出やすくなります。

しかるに、0歳から子どもを預けて働く母親が増えています。乳児を預かる社会コスト(保育園など)は月50万とか60万は掛かるでしょう。コスト面だけでなく「健全な、安定した愛着形成」の上では問題が多く、その生涯に渡る社会コストは絶大です。増加する、「引きこもり」や「意味不明の犯罪」、「発達障害」は、家族制度の変化や都会化が進む中で生じています。もちろん、遺伝的な発症もありますが、それでは説明できないほど増加しているのです。しかし、何の対策も講じられていないし、「引きこもり」の様に、社会は臭いものに蓋をするだけです。

待機児童問題は低コストで一気に解決する 最良の保育者は母親です

その対策として、あまり議論されていないのが、「保育園に入れなかった母親に一定期間十分な手当を支給する」政策です。2歳になると、何とか保育所も見つかりますし、幼稚園を活用するなどの方法も残っています。2歳半か3歳までは、この制度を選択制にする。十分な手当とは、現在の休業補償の金額アップと期間の延長です。制度の詳細設計はここでは触れません。また、休業している間に、ICTで学び直しを義務付けるのも一方です。仕事のスキルアップにつながる講座を雇用主と相談の上選択させれば良いのでは。この場合、一部の手当アップの費用の一部を企業に負担させてもよい。もちろん、予算枠の範囲ないでの実施だが、保育所問題はかなりの部分が一気に解決すると思います。無理して働くより、そのような制度を好む親もいるでしょう。また、少子化の歯止めにもなります。
今まで、大人の都合のみで「保育所問題」が論じられてきた。しかし、「子どもの発達の都合」という観点を入れるべきである。

 

「音に対する敏感期」
教育改革のところで述べましたように、言語の音素や音楽に対する敏感期は0歳から2歳半で、それを過ぎると音声識別能力の獲得が難しくなります。教育もそれを考慮しなければだめです。英語の音声能力育成のときに配慮が必要です。

「前頭葉の発達」 ドーパミン(脳内ホルモン)
IQで測られるような能力に指令を出したり、問題解決などの高度の能力をつかさどるのが、前頭葉(前頭前野)です。(ちなみにIQはアメリカの陸軍で開発されましたが、「人の能力を測るのに適切でない」とすぐに廃止された。日本では、IQが一人歩きし、幼児教育の最高の指標にもなっている)。
集中力や自律、自立もこの分野の役割です。サルと人間が分かれるのは前頭前野の働きの違いです。前頭前野は2歳ごろから発達を始め、比較的長期に亘って発達します。前頭前野の発達は、ドーパミンと言う脳内物質と関連が深い。
最近の研究では、乳幼児期の育ち方が、その人の生涯に亘って影響を及ぼすことがわかってきた。乳幼児期の経験が、前頭葉の働きを活性化し、使える脳に育てる。学者によっては、「乳幼児の過ごし方を知るだけで、その人がどの様な大人になるか分かる。」とすら主張する。この「乳幼児の経験」を豊かにする策の一つが「幼児教育の無償化」である。従って、高等教育の無償化よりも先行して実施されるべきともいえる。将来の経済効果も高いといえる。また、子どもがいる世帯を補助するので、少子化に歯止めをかける誘引ともなる。

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