成長戦略と教育改革は一体化したものです。経済の主体が人材だからです。人材が育っていない場合は、企業が方向転換しようにも、新規分野を充実させるにも、不可能です。今がそのような状況で、グローバリゼーションやIT革命に乗り遅れた日本の企業が、キャッチアップしようとしても人材がいません。また、社内の教育にも予算を割いていません。
eラーニングやウェビナーなどを活用したICTによる再教育のインフラ構築には行政の支援が必要です。
そもそも教育改革とは
1980年代後半より世界はグローバルゼーション+情報革命(IT)+インフラ整備に向かって進んできた。
各国はそれに伴うインフラ整備を進めてきた。教育改革も大切なインフラである。日本はこれに劣後し、30年にわたる深刻な経済の停滞を招いている。停滞の主な原因は、一重に、エリート層(政治家、高級官僚、大企業経営者等)に於ける、未来を読み解く力の欠如によるものだ。(このことは私の教育ブログ https://子育てひろば.com/ にて述べている。「失敗の本質」の本質 の投稿を参照ください。)特に政治は今、戦前回帰を目指すことに重きをおいて、若者に未来に羽ばたく力を与える教育改革を等閑にしている。安倍首相も森友・加計には熱心なようだが、「教育勅語」を暗唱させる教育には、日本の未来の繁栄はない。
教育改革の構造は次の通りである。
英語力+情報処理能力(IT/ICT)+問題解決力
この三つの能力は三位一体となり、その国民の力となっている。
急速に変容する現代、10年に一度の教育の見直し(教育指導要領改定)では時代に乗り遅れる。政府も森友や加計の問題にうつつを抜かしている場合ではない。
(詳しくは https://子育てひろば.com/ )
英語力:
中国・韓国なども1990年には小学校3年生から本格導入し、首都圏においては小学校低学年から学んでいる。この教育で育った世代が今社会の中堅に育ち上がり、それぞれの国力となっている。世界の若者が集まると、英語ができないのは日本人だけである。日本は2020年に漸く小学校3年生から導入するが30年の遅れがある。しかも準備が不十分で失敗は必至である。相変わらず、日本人が日本人に英語を教えようとしている。教育現場は混乱していて、2020年までに所定の効果は望めない。
ネイティブスピーカーの英語教師の大量採用と、ICTを使用しての指導、日本人教師の英語教育専門家(TESL)の大量育成が必要である。(海外留学等)
日本の英語教育の根本の誤りは、英語は音声言語であり、音声に対する敏感期が3歳までであり、文法に対する敏感期が8歳までであることを英語教育の専門家も理解していない。(一部幼児教育に携わる人や、脳科学者は理解している。)小学校高学年になって始めても効果が薄い。これは、ピアノを小学校高学年になって初めて習い初めても大成しないのと同じである。有名私立小学校の状況を全調査したが、千差万別であった。政治の介入がないと上手くいかない。
先日、中国のエリート大学、スタンフォード大学を出て、現在芸術家として活躍している女性と話した。「日本の若い人は英語ができない。」、「何も意見を持っていないので失望した。」、「歴史的認識ができない日本人は尊敬できない、それより史実を知らない。」などと感想を述べたが、これは、外国人なら誰しも思うこと。
ビジネスの現場では日産のある取締役の意見が日経新聞に掲載されていた。「会社がグローバル化すればするほど日本人社員が埋没してしまう。会議が英語ということもあり外国籍社員は競うように意見を言うのに、日本人は黙って聞き役に回るので、脇役の仕事しか与えられない、能力は高いのにもったいない。」、「海外には将来の最高経営責任者(CEO)を目指して大学で猛勉強する人が山ほどいるのに、これでは競争に勝てるはずがない。」どこのグローバル化した企業でも同様なことが起きている。
日本人は文部行政・政治の犠牲者である。また、30年の停滞は偶然ではない。
情報処理能力(IT/ICT):
日本の教育は有名校に入るための偏差値向けの学びに終始し、時代の変化に対応する学びができていない。大学レベルにおいても対応が不十分で、高等教育無償化を進めても、社会が求めていないものを学んでいては本人も救われない。
中国などはAIに対応する人材育成やインフラに膨大な投資をしている。日本が方針を変え、急遽先進IT化を図ろうとしても、人材が準備されていないので困難である。この意味において、経済再生と教育改革は一体化している。例えば、ようやくごく最近になって、総務省がプログラミングの少年団結成構想を打ち出したが、遅きに失した。先行する海外では人口の一万分の一に相当する「少年団」がある。
政権は今は、急に「人づくり革命」を標榜しているが、選挙が終わったら、「戦前回帰」の怪奇現象が現れ、失速してしまう懸念も多い。
問題解決力:
多くの国が、「問題解決力」を教育の目標にしている。暗記中心 の人材育成が、日本のエリートの無能につながっている。最近はアクティブラーニングとかクリティカル・シンキング(批判的思考)という教育法の導入が図られているが、伝統が無いため、試行錯誤の状態である。
※ クリティカルシンキングに関しては、2012年文部科学大臣平野博文は大学入試などでの導入を提案し、同年京都大学院教授楠見孝は「高校生が身につけておくべき最も重要なもの」とした。しかし、日本の教育の伝統に根差していないため、現場では思うように進んでいない。それどころか、森友学園の様に時代錯誤の教育をバックアップする政権の存在がある。
学び舎の歴史教科書はクリティカルシンキングの教材には最適だが、安倍首相の親衛隊から灘校などの採用の私立高校に猛烈な抗議が寄せられている。
上記3要素においてはいずれも主要諸国に大幅に劣後しており、回復のためには行政の強力なバックアップが必要である。政権交代がなければそれも望めない。それは、現政権が未来に照準を合わすのではなく、過去に照準を合わせて、「戦前回帰」を目指しているから。選挙のときは「経済再生」を約束し、勝った後は、国家権力の拡大と、「戦前回帰」を目指した。今回も、教育改革は選挙のための方便である。
今回も、目先を変え、「人づくり革命」を標榜して、国民を幻惑使用としている。「人づくり」は、自民党政権が今まで一番手抜きしてきた分野である。
日本の教育は明治初期にプロイセン(ドイツ)の方式を真似たものです。国家の需要に合った人材を大量生産する方式で、全て上から教え込むものです。これを「従来型教育」と言います。しかし今は「21世紀型」の教育に代わろうとしています。個々人の発想を引き出すことを大切にし、コミュニケーションやコラボレーションを大切にし、過大発見力や解決力を磨く、ある意味で、教え込まない教育です。多くの国が教育改革を行い、経済成長を遂げています。
受験勉強も塾での勉強も、社会に出てからは、実際何の役にも立たない、「金銭と時間、能力の浪費」です。